ずっとずっと繋ぎとめる言葉ばかり考えてる











※「与える愛か 奪う愛か」の続編です。





















「望」

事後、ぽつりと呟くと軽い声で受け答えて俺の頭を撫でながら抱き寄せた。
一つのベッドで共にして何年経つだろうか、と、いっても半同居に近い。

いつも何処かに行って、何をしているのか全く以って不明だが、問い質す気はない。
一週間会えない時だってある、連絡が無い時だってある。それでも―――

たった二文字だけの呼びかけで、此処に存在してくれるのなら構わなかった。

「いいにおい」
「また、したくなっても知らないからね」
「別に構わない」
「おーおー大胆な発言ですこと。昔の君じゃ考えられないことだ」
「なあ」

なあに?目線を俺に向けたのをいいことに軽く口付けて、鼻を首に擦り付けると匂いが鼻腔を擽る。

「お前が思ってるほど変わってないよ」
「へえ」
「知らないだろうけど、お前と知り合ってから俺は必死だったんだぞ」
「へえ」
「最初は存在することが間違ってるだろと思ってた」
「ひっどいねえ」

声を殺して笑う所からして、さほど気にしていないので調子に乗って話を続けた。

「知り合った後は死ねって思ってた」
「綺麗な顔してとんでもないこと思うねえ」

責任を取れ、お前は俺を助ける義務があるんだ!と捲くし立てながら言ったあの頃が懐かしい。今、思い返すと赤恥でしかないが。

「でも助けてくれるなんて思わなかった」
「思いっくそ信用されてなかったねえ。まあ、いいさ」

一旦区切って、俺の髪に五指を絡ませて遊ぶ。

「代わりに、卒業式でいいもの見せてもらったからね」
「…………それは、忘れてくれ」
「あれ?いいの?」

忘れて、君のことどうでもよくなって一生顔を見せなくなるかもしれないよ。そんな意地の悪いことを言う奴の胸を握り拳で叩いた。

「実に見ものだったよ」
「五月蝿いな」
「いやあ、ほんとに見ものだったなあ」





このまま逃げるつもりか?





「あんなに泣いたの初めてなんじゃないの?」
「……進学すること自体に驚いたのに、東大とかそんな頭なかったし」

付いていくこともままならなかった俺の気持ちなんて分かるわけないだろう、そう言っていて酷く落ち込む自分に嫌気が差し、気持ちを切り替えるよう力一杯抱き返した。

「だから脅したの?」
「切羽詰ってたんだよ……だって、俺は」





お前は、俺に癒えない傷を作ったんだ。
だから―――






「お前無しじゃ生きていけないんだ」
「ははっ、分かってるよ」





勝手に、離れるんじゃない。





(そういう風に仕向けたの、紛れもなく僕だもの)















ばかざま。










10/01/04  色んな意味で完全に切れない縁で繋がっていたらいいのに。