「あれえ、鍵掛けてた筈なんだけどなあ……」
驚く素振りはなく、冷静に玄関前に立つ人物を頭から爪先まで観察すると右手から垂れているキーホルダーが目に付いた。可愛らしいマスコットが少しの風で揺れている。
「あ、もしかして合鍵持ってた?」
あははと軽く笑った後、風間は納得した。
「そうだよね、幼馴染だもんね」
「……もう寝ようとカーテンを閉めた時、ゆきの部屋電気消えてて。でも一階は付いてたから、消し忘れかと思って」
「ああ、それで……優しいね、」
「雪ちゃん」
寝る前だと言ったとおり、薄い桃色のパジャマを身に着けていて可愛いと思う前に風間の腕の中にいた綾小路が小刻みに震えていた。視線を切り替えると、泣き顔が映る。
「や、……あ…ぅ……あっ……あっ」
今の体勢を無理にずらして彼女から見えないように風間を盾にするつもりでいたが、挿入したままの性器が内壁を擦り上げて絶妙な快感を得ただけだった。余計に自分が今どのような状況にあるかを自覚されてまた涙をぼろぼろ流した。
「ぬ、抜けよ……抜け……っ抜けったら!」
「雪ちゃんに見られてるから?でも、すごく締め付けてるよ」
「っ…黙れよ……!」
奥を突こうとする度に、引っ付いてくる風間の腹を全力で押し返そうとしてもなかなか引き下がらない。それどころか不満げに口を尖らせて文句を言う。
「やだよ、折角繋がったのに」
「なっ!?何考えて、あっ、―――っっ!っ!」
脇腹を固定して、一時中断した行為を一方的に再開した。暫くそのままの状態を保っていた為、自己防衛本能が働いて異物を受け容れやすく変化し、引き抜きするだけでぞくぞくと電撃のようなものが背筋を走る。腰が浮く。
「や、動くな、クソ、ぁっ、動くな……バカ、死ねっ……!」
動かずに玄関前で立ち尽くす彼女の視線が痛い。嫌だ。罵倒と抵抗で沢山な気持ちと裏腹に身体は酷い程この行為に酔い痴れている自分も嫌だと綾小路は自己嫌悪に苛まれる。溢れ出る涙を拭う余裕もなかった。
「キツ……はあ、好きな子に見られて興奮してる?」
「な、ぁっ、あぁあっ、あ、ふざけっ……やめろ!やめ…っやめろ!」
「綾小路ねぇ、ついさっきまで雪ちゃんとしてたこと実践したら興奮してたよ。よっぽど君のことが好きなんだろうね羨ましいや」
最悪な状況で最悪な暴露されて彼女の方を向く風間に文句を飛ばそうと口を開いた時に此方へと向き返してぐっと一突された。油断していた為に喘ぎが大きく出て、かっと顔を赤くした綾小路が可愛いなあと純粋に思った風間は一心不乱に乱れる様が見たくて何度も突きを繰り返した。
「や、やぁ、あああ、あーっ、あっあ、いっ……!」
片手で口を押さえ、声を封じても擦れる度に出てくる水音が辺りを反響させ、耳を塞ぎたくなった。床に押さえ付けていた足が限界を訴えて震えが酷くなる。それを感知した風間は太腿を撫でて、低い声で尋ねた。
「……もういきたい?」
怒ると、性器を握り締められた上、絶妙に感じる所から外されて何でもない所ばかり弄られて気がおかしくなる。焦らされて、辛うじて保っていた理性がどんどん崩れていく。
「あ―――ぁ、あ」
「いきたい?」
再度尋ねられて靄が掛かりつつある頭の中で、このまま言わないと生殺し状態だということは理解した。
「や……」
目の前には彼女が居る。そんな状況で、どうして男を欲しがらなきゃいけない。最悪だ。頬を伝う涙を拭わずに手を解こうと懸命に爪を立てると性器ごと上下に振って、手を払う。限界寸前の所で過剰な刺激を与えられて上り詰めそうになった感覚を風間によって阻まれる。輪っかを作ってぱんぱんに張った陰茎を掴み、射精の制御をしている。
「あ、あぁあぁう、あ、ああ、あ」
「んー?」
彼女のことを全く気に掛けずに、不思議そうに頭を傾げるのが悪質で仕方ない。何も知らない顔でとぼけて、ひたすら綾小路の返事を待つ。イエスかノーか答えるだけでいいと目が語る。
「っ…う……ううっ……」
この状況で迷う必要はない、否定をするべきだと理性が訴えている。反面、本能は解放を望む。正直言って今まで受けた快感が身を蝕んでいた為、否定することをに躊躇いを感じていた。なかなか口を割らない綾小路に少し促すよう、握り締めていた陰茎に親指の爪で軽く撫でた。
「綾小路」
「ひ、やぁうあう、う、いっ……」
がくがくと全身が震える。もう限界だった。離すように、が、弄って、に切り替わる。決死の覚悟で風間に向かって長かった答えを出した。
「い―――いかせ、てっ―――……っ」
「―――うん」
嬉しそうな顔で頷いて、ぐちゃぐちゃになった下を解放した。塞き止められていた絶頂が倍になって迫り上がってくるのを感じ、身をしならせた同時に風間もまた絶頂を求め、一際奥深く自身を突き入れる。
「あ、ぁ―――――っ!」
熱いものが迸る。ただ、それだけの認知しか出来ないほど頭の中が真っ白になった。
*
口を開ききったまま茫然自失していると、こつこつと足音が近付く。事が終わって一息付けると思ったら間違いだ、問題がまだ残っている。
「はーっ…はーっ……うっ、う、や、来るな……っ……見るな、見ないで……いやだ」
「駄目」
泣き続けてぐしゃぐしゃになった顔を覆う手を外された。反射的に、そうっと目を開けると逆さまに映る顔。そして、風間の時に感じたデジャヴ。
「ゆき」
「もっとよく見せて」
それはそれは、見惚れるくらい綺麗な笑顔だった。
わたしの見ている世界を
きっとあなたは見ていない
11/06/17 それぞれの見方が異なっていた。
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