※どっちも頭悪い方向の馬鹿阿呆です。




















「―――よう」


「どうしたんだ、急に会おうだなんて」
「そうね、都合よく集まれたのが奇跡ね」
「急に呼びつけて悪いとは思ってるけどよォ……久し振りにお前らの顔を見たくなったんだからしょうがねーだろ?なっ!何年振りだよって話だよな!」

鳴神学園から歩いて近くにあるカフェの、とある一席。
ジャージ姿のまま、貧乏揺すりをしつつ座っていた新堂は久し振りに会った友人達に席を促した。大変嬉しそうに歓迎したのが、かえって不気味に映ったのか日野と岩下は徐々に態度を変える。

「新堂君、嘘は良くないわよ?」
「ちょっ……大人になってもカッター持参かよ!!ここ、常連なんだよヤメロ!仕舞え!」

目の前にカッターを真顔で突き出してきた岩下を慌てて止めに掛かった。人がいる所で危険物を見せられたことによる過剰反応だと何度言っても疑り深い友人達は疑問を消すことなく、再度の質問を続けた。流石、何事にも卒のない優等生だっただけのことはある。

「何を隠してるんだ新堂?」

じっと不審な目を向ける友人達の手から逃れる解決策は、ある。一つだけ。出来ればお世話になりたくなかったが、今回は仕方ない。少しの我慢で勝ちを取れるのなら。

「はっはっはっ、話も何だから何か注文しろよ。俺の奢りだぜ」
「まあ、当然よね」
「ああ、当然だな」

忙しい中、無理やり時間を作って来てやったんだという雰囲気を醸し出す二人を目にして新堂は少し涙を流しながら財布と相談することにした。



*



「本当に何の用で呼んだんだ?とりあえず久し振りとは言っておく」
「全然、再会の感動がねぇな!?昔からあっさりしすぎるだろお前ら!もうちょっと……こうさあ!!いや今まで連絡しなかった俺もだけどさあ、しっかし奢りだからって、高いもん遠慮無く頼みやがって……ブツブツ」
「やっぱり高い物だと素材が良くていいわね、美味しいわ」

落ち込んでいる友人に対して優しさの欠片もない、むしろ全部ない。絶対そうだと決め付けて、のうのうと楽しく食事をする二人を睨み返しつつも、自分自身が込み入った事情を好まないだけに、このような淡白な所は逆に付き合い易く好印象を持てる。ので、これ以上の文句は言えない新堂であった。

「で、何だ?」
「まあまあ、もうちょっとしたら分かるから!」

と、先程からしきりに尋ねる日野を落ち着かせた同時にカフェのドアが開く。来客者に気付くよう、ドアにベルの音が店内で反響した。

「悪い、待ったか?」
「いや、すんげーイイとこに来た!綾小路コイコイ」

少し息を切らしながら此方へ来る黒い姿。手招きして空いてる所を勧めて座った同時に、見計らったように店員がメニューを聞きにやって来たので軽く飲み物を頼む綾小路。

「凄く久し振りだな」
「本当。久し振りね」

注文を聞き終えた店員が去ると、直ぐにわらわらと集まって会話を繰り広げる。淡白とはいえど、久し振りに会う友人と話したい気持ちは大きいのだろう。

「今は何やってるんだ?」
「ああ、新堂と同じで教師やってるよ。音楽な」
「あら、それはまた凄い運命ね。同僚が出来て良かったじゃない新堂君」
「はは……」

苦笑いをする新堂に違和感を覚え、尋ねようと声を出しかけた時。ドアのベルが盛大に鳴り響いて、店内にいた客もみんな玄関に視線を向けた。

「やあ、待たせたかい皆!真のヒーローは遅れて登場するってやつさ!!」

騒がしいまま、席に着くとキラッ☆と煌くピースを向ける変人を見、すぐ。

「あ、すごい苛立った」
「日野君に一票」
「俺も一票」

親指を下に立て、批判を起こす懐かしの友人達の態度で心折れた変人、風間は両手で顔を覆い隠して泣き出した。

「うわあああん!綾小路ィ!!!」
「皆、再会で照れてるだけだよ、ふふ。泣かない泣かない」

目に溜めた涙をそっと掬う綾小路に、目前にいる三人は場を驚きで満たした。人目を気にせずに自然な様で掬ったからだ。口で。

「あら」
「な!?なななな」
「おい!お前ら、人前ではやめろっつっただろが!!!」

慌てて身を乗り出して引き裂く新堂は、常連でVIP扱いな対応を取ってくれ、個室に近い席に案内してもらえて切実に良かったと思った。ついでにとばかり綾小路にこっそりと耳打ちした。

「お前、ほら、あれ、紹介しなくていいのか?」
「ああ!そうだった」

ぽんと両手を叩き、皆の前に直る。が、顔を合わせるのが恥ずかしいのか視線を彼方の方へちらちらと逸らした。

「実は、」
「うん」
「その、俺達…………」
「うんうん」





「結婚したんだ」





「は?」

目が点になる日野と、あらあらまあなんて口に手を添えるだけの岩下。反応はそれぞれだったが、印象に残るものばかりだ。

「まあ、正確的には養子縁組だけどネ☆」
「すげーリアルだな!?」

真っ赤になって黙る綾小路の代わりに風間が笑いながら、互いの左手を見せる。そこにきらきらっと輝く指輪があった瞬間、日野は机に身を乗り出して口調を素に戻してしまった。咄嗟に突っ込んだ類だった為かすぐ我に返り、ごほんごほんとわざと咳を零しながら後ろに下がった椅子を正した。

「だから風間行人って認識してくれると……嬉しいなって…………やだ恥ずかしい!」

今度は綾小路が顔を覆った。

「あっはっは~テレ屋さんだなあ~そんな所が可愛いんだけどね♡ほら、顔をお上げ?」
「あ、う……風間……」
「違うでしょ」

そっと顎を掴んで、自分の方へと向けさせる。

「の、望……」
「いい子だね……行人」

にこ、と柔らかい笑みを見せて恥ずかしがる自分を安心させてくれたのだと理解した綾小路はぶわわっと目に見えないハートマークを一杯飛ばした気がする。

「……好き!!!!」
「僕も!!!!」

がっ、とぶつかり合ったかと思うほどの抱擁を交わす。本当に個室に近い席に案内してもらえてよかった、と心の中で言うの二回目だけどありがとう店員さん。出来上がってる二人を放置したまま、三人で会話を繰り広げる。

「ちゃんと手順は踏んでるみたいね」
「知らなかった……あのまま延長で付き合ってたのか」
「アレを学園で何度も見てる俺の苦しみ分かってくれたか?分かるだろ?なっ!」

新堂の嬉しそうな顔で、感づいた日野は目を細めて小声で尋ねる。

「お前……苦労の塊を俺達に見せ付けたかったのか」
「一蓮托生!」

力一杯、親指を立てると横から冷静な声で岩下が続く。

「牽強付会ね」
「けん……なんだって?」
「自分の都合のいいように、道理に合わなくても強引に理屈をこじつけることだよ、お前そんなんでよく教師が務まったな」
「うるせーーー!!!体育さえ分かりゃいいんだよ!体育!スポーツはいいぞ!!」

何気ない指摘が心に来たのか、無茶苦茶な理論をかざして無かった事にされた。調子を取り戻した新堂を放って、一つ溜息をつく。

「まあ何だその、とりあえず」
















「末永くお幸せに……だな」















愛の行方は誰も要らない





11/06/02  大人になって自由になっただけに物凄い大っぴら希望☆