「よう」
「あ」
「げ」
白い息を吐いて、歩道橋の手すりに身体を預けていたら偶然通り掛った二人と会った。反射的に片手を上げて挨拶すると、それぞれの対応が全く異なっていて姿形は成長しても相変わらず変わらない性格に少し安心感を覚えた。
「……また、デジャヴだ」
「忘れたのか?」
皺を寄せて細目になる風間の横で高校の最後、と助け舟を出す綾小路。二人の息が何だかぴったり合っていて可笑しかった。綾小路の言うとおり、高校の最後の正月辺りに会った記憶が存在する。同じように、こうして手を振って挨拶して。
(ああ、でも一つだけ)
風間が口にしたデジャヴ、とやらを感じる中、一つ違う部分があった。
「随分と仲がよろしいようで」
「そっちは一人なわけ?寂しい奴だな」
「うっるせ、待ち合わせなの」
高校の時は、挨拶した途端に真っ赤になった顔で慌てて綾小路と距離を取っていた。何でそこで現れるんだ!と随分と怒られた覚えがある。ばったり会っただけなのに、だ。
(否定しなくなった辺り、あれだな)
くしゃくしゃと髪を掻き揚げる。高校が終わったのを境に、ストレートに戻した髪の感触が心地良かった。
「そうか、今日は一段と冷えるから風邪引くなよ水科」
「綾小路は、ほんっと優しいよな〜その優しさ半分、風間に分けてあげたって」
冗談を言って笑い合うと除け者にされた風間が面白くなさそうに綾小路の腕を引っ張って、横を通り過ぎた。このまま何も言わずに居なくなると困るので少し開いた距離でも聞こえるよう大声を上げた。
「あやのこーじ!おたんじょうびおめでとー!!また今度ちゃんと祝いに行くからなー!」
風間の居ない時にでもと付け加えると風間の罵倒が飛び込んだ。高校の時も思ったが、感情を表に出すのがあからさま過ぎて笑える。笑顔を浮かべ、友人達が居なくなるまで手を振り続けた。
(―――ようやく関係を認めたわけか) |