「今までの経験も含めて」
「え」



放課後、屋上でスケッチを続ける風間に付いてきた。

「俺達は長く続くとは思えない」
「…何で、またそんなこと?」

二人きりの時間。長身である風間の肩にこつんと頭を預ける。色々と考え過ぎた時には凄く気分が落ち着くので、いつの間にか当たり前の動作になった。そう、当たり前になっていた。―――それがシグナルだ。

「お前だって分かってるだろ?」
「……」
「俺達は性別からして問題だ」

そうだね、と吐く風間の声は至って普通だった。全て理解した上で言っているのだろう。
性別の壁などぶち壊せばいい、何もかもを受け容れることが大事だと頭では理解している。だけど理性やモラルが許さない。世間体、以前に。

「俺は幸せになりたい」
「うん」

自分勝手なことをぶつけているのは自分でよく分かっている。
謝罪も含ませると、何も悪いことしていないのに謝られる覚えはないよと制された。こういう、妙に悟った所が好きになってしまった要素かもしれない。ガリガリと白いスケッチブックが黒で塗り潰されてゆく様を見ながら次の会話を持ち出す。

「…成長して、俺が結婚したら祝福してくれるか?」
「子供の顔を拝ませてね」

自分の描いた未来よりも更にもっと未来を描いて言った風間に驚き、目を見開く。
暫くして、何故だか無性に嬉しさが溢れた。

「誰よりも最初に見せてやるよ」










(ああ―――こいつを好きになって、よかった)






















(愛したのは)真実を知る眼差し