奏でる温度
「授業はどうするのさ…っ!」
「自習にしておいた。この4限終わったら、今日のは全部終わりだ」
真面目に答えて、真面目に奉仕に戻る精神が凄い。
と、そんな感想を述べている場合じゃないだろうが!自分自身に突っ込む。いい加減止めさせないと、取り返しのつかないことになってしまうのは目に見えていた。
「嫌々言う割にはこうすると感じてくれるよな、風間は。うれしい」
「っちょ、っ綾」
馬乗りになったまま片手だけで器用にジッパーを下げて、勃起してもいない性器を取り出すと優しく五指を絡ませて、撫でた。時折、上の方に持ち上げていくとカリ首に当り、そのまま挟んで親指の腹で亀頭をぐりぐり円を書くように押し付けると一気に快感の波を引き出され、熱が中心に篭り始めた。
「ぐっ、う、このっ」(う、上手すぎるだろ…ぅううああああ!)
「あ、匂い濃くなってきた」
鼻をひくつかせて匂いを嗅いで蕩けた顔を浮かべる。硬くなってきた性器を舐めたいのだろうか、ごくりと唾を飲み込んで欲望を掻き捨て、代わりに上体を曲げて風間の唇を犯す。
「んっ、んむっ、う、ふ」
「ふ、ん、んん、っは、あっ」
「う、ん!?」
性器を懸命に扱きながら、もう片方でゴソゴソと腹の上で這い回る手の感触がして変に思った風間は唇を犯されながらも視線だけ何とか下へ向けると自分のズボンを脱いで、後孔へ手を回していた。
「ぷあ……ん、挿れていい?」
唾液が混じり合い、垂れた一筋をうっとり舐め取りながらそんなことを言った。
「なっ、ちょっ―――待て!」
くちゅん。水音が耳につき、嫌な予感を胸に抱えてもう一度視線を下ろすと勃起した性器を受け容れる準備を施していた。真昼から性交に耽ることは勿論、場所が場所なだけに危険要素が伴う。
「夜まで我慢できない」
「ば…君ねえ!こんな所見付かって、教師の道断たれていいのか!!」
「その時はお前に養ってもらう」
「勝手に押し付けないで下さいっ」
慌てて腰を掴んで止めに入るが、物欲しそうに見つめる綾小路には無意味だった。
「全てはお前が蒔いた種だ。ちゃんと綺麗に収穫しろよ……いい具合に熟れてるだろ?」
(熟れてるっていうか……熟れすぎだっつうの!!!!)
誘い込むよう陰茎をなぞられ、腰から背中にかけて電撃がぴりっと走る。
「……なあ」
悩ましげに顔を覗き込まれ、何を言われても動じないように身構える。
が、予想に反して綾小路は唾液に塗れた紅い、――あかい舌を覗かせて首筋をつうっと舐め上げて、獲物を捕らえる。
「夜までお前の匂い、いっぱい感じさせて……?」
「…………ッ!」
こうして、何度も何度も綾小路の色欲にあてられて暴走してしまうのが
―――日常茶飯事だった。
*
「あ、あ、っああぁああ……っ!」
「ッ…熱…」
「風間、風間、ぁ、かざまっ…あ、あっ、う!」
「声、大きすぎっ……ちょっとは抑えろ、っ」
騎乗位から無理やり上半身を起こした際、重力が加わって奥まで突き上げられた綾小路はひっきりなしに声を上げた。流石にこんな所を見られては色々と不味い、咄嗟の判断で口を塞ぐと嬉しそうに舌を捻じ込んできた。
「ぅっ…む、ん、んー、んっ」
この状態をずっと維持させるわけにもいかず、微かに揺らめく腰に手を添えて強弱つけながら動かすと熱の篭った内壁と性器が擦れ合う。その絶妙な感覚に軽い痙攣を起こし、口の隙間から喘ぎが漏れ出す。
「ぷぁ、ん、んん、う、ふ」
「声」
「はあ、あ…あぁ……抑え、抑えるから早くっ…早くちょうだいっ…」
「分かったからそんなに急かすなっ」
背に爪を立てられ、上部からくる痛覚と下部からくる快楽が混じり合い、眉根を顰める。
「腰ばっか撫でなくていいから…前、触って。まえ、むね、あつい」
「お、おい」
腰に添えていた手を剥がして、少し乱れたベストの中へと誘導した。くしゃりと彼の特有である黒いワイシャツに皺を作り、その上からぷくりと勃った乳首を主張しているのが分かる。
「服の上からでもいいから揉ん」
「皺になるから我慢しろ阿呆!…ほら、代わりにこっち扱いてやるからいいだろっ」
「えっ、あ!そんな、強く握ったらダメだ…っ、ぁ、あっ、ダメ!あ――あ、あ!」
何度も身体を重ね合っただけに余計な気遣いは要らない。零れそうになる先走りを掬って、擦りつけながら扱くと直ぐに身体をしならせて手の中で爆ぜた。小刻みに震える中、きゅうっと性器を締めつけた。
「あ、あぁ…ぁ…ひどい……、うっ、う……」
「我慢できない所まできてたくせに何を言、ッ!?」
言い終える前に体重をかけられ、再び仰向けに戻された。同時に、中をこれでもかというくらい思いっ切り締め付けられて声が詰まる。
「一緒にイかなきゃ意味がないっていうのに……さっさと出せよっ!」
「うええっ、待、まてまて落ち着けっ!」
涙目で睨みを利かせた綾小路は風間の制止も聞かず、本能のまま腰を振って絶頂へと追い込みにかかる。粘ついた液体がぐちゃぐちゃと酷い音を立ててとても聞いていられなかった。逃げようにも折り曲げられた両足で腰を固定されて、ああ、これは墓穴を掘ったのかもしれない――と後悔の言葉を頭の中で描いた。
「っ、う!…もう、あ、綾小路っ、離、―――っっ!」
「んん!」
どくどくっ、と熱い迸りを奥まで、腸内に、流し込んだのを直に感じ取った。最悪だ。
ぼんやり霞む視界の中、余韻に浸る彼が漏らした一言は。
「はあ……はあ……ん…………ふふ、いいにおい……」
「はは、は、はぁ……疲れた……」
肉体的にも精神的にも綾小路の相手は人一倍、疲労感がどっと湧くのが難点だと風間は溜息をついた。抱きついたまま動じない綾小路の呟く小声を聞き取らなければ、もっと疲れが出なかっただろう。
「夜は…何処でも好きなように触っていいから」
「……幾つになっても元気だね、綾小路は……」
素直に感想をぶつけると陶酔しきった顔で、お前がだらしないだけだと嗤った。
10/01/16 大人になったら更に暴走する子でいい。29綾の笑顔が物語っている^^